★ニャーさん部屋
(らんまるーむ






  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
「にゃー!」


あれ? 空耳? …気の所為かな?


「にゃー!!」


んんっ!? …ね、猫ぉ〜?


とある、小雨のちらつく夜、印刷所の玄関に一匹の猫が現れた。


ガラス張りでシースルーのドア越しに現れた猫は、雨にしっとりと身体を湿らせて、


にゃあ〜


にゃあ〜


…と切ない鳴き声を上げる。


その戸の向こう側で、悶える人間が一人。


…彼女は無類の猫好きなのである。


たちまち身体中のアドレナリンが沸騰する。


「今のボルテージなら、バッファローにも立ち向かえるわ!」


…と鼻息も荒く、ゴクリと唾を飲み込みながら、


迷わずドアノブに手を掛け、オープン・ザ・ドア。


祈る様な面持ちで、猫の動向を見守る彼女。


果たして…


猫はするりと、そしてにょろりとドアの狭間を通り抜け、室内へ足を踏み入れる。


どうやらこの猫のココロの扉は、「ひらけゴマ」となってくれた様子。


本当はその場で、北島サブちゃんの、「祭〜りだ祭〜りだ豊年祭ぅ〜り〜」宜しく、


激しく、大胆に、リオのカーニバル級に狂喜乱舞したかったであろう。


でも、ちょっと待って! ここは会社です、一階です、人目もあります。


彼女はそっと一人喜びを噛み締めるのでした。


猫は「いちげんさん」の彼女に身を擦り寄せ、くねくねと絡み付きながら、


可愛らしい声で、一頻り「にゃあ〜なぁ〜」と甘えながら、


その後、名残惜しくも「魅惑キャンペーン」は終わりを告げ、


そうして何処かへと、帰るのか、それとも出掛けるのか知る由もなく、


悩殺猫は静かに夜の帳の中へと消えて行くのでした。








<つづく>